NPO法人は営業力

0 Comments

縁あって、NPO法人の設立について授任しましたが、これがまたとても時間と手数がかかる作業。同じ法人設立でも営利会社とは雲泥の差。

まず、定款作成ですが、これは福祉関係の会社と同じく細かく目的などが法で定められて20列挙されているそれ以外を指定したり逸脱することは許されない。裁量がないのですね。
それまで一定の活動があることが前提で作られますが、初年度・次年度の事業計画書や予算表、それもそこに入っていないものは一切載せられないし細かく全部チェックされます。
事業会社の設立なら将来的にやりたいことも全部目的に入れますが、NPOは実際にやると決めていること以外は一切書くなと指導されます。そして新しい事業分野などはその都度総会できめて定款変えてくださいって厳しいご指導。お役所も事前に出しているマニュアル通りでないと受付もしてくれません。役員の就任承諾書にしても普通は番地以降は?ー?ー?といった風に略して書きますがそれも一切認められず一字一句住民票の通り?丁目?番?ー???号でないと行けないなどなど。挙げ句の果てには改行までいろいろチェックされてやっと提出。
そうしてから審査されて縦覧され一般市民からもチェックを受けて、申請してから3、4ヶ月してやっと認証、そして認証を得てからわずか2週間で登記をする必要があり、その後登記の報告やらなにやら、合同会社はもちろん、株式会社よりも必要な作業が多い。

それは設立してからもそう、税務申告とは別に、認可庁への活動報告提出は毎年必ず必須です。
NPOって役員報酬をもらえるのは全役員の1/3以下という規定が法で決められていて、社員(従業員ではなく出資者という意味ね)は最初から10人以上、かなり体制が固まってからの法人化でないと実際つくるのは難しいし、つくってからもきちんと運営しないといけません。
たとえ登録免許税やらなにやら無料になっていても、それからの運営の手間やコストを考えると割が合いません。

なんでそんなしんどい思いしてやるの?事業法人や一般社団法人ではだめなの(実際そっちを選ぶ方もいらっしゃいます)という向きもありますが、NPO法人といえば社会的信用が高いんです。
一時期暴力団が隠れ蓑にNPOを作ることが流行った時期がありますが、その反省か設立には厳しいチェックが入りますし、その後の活動もすべてきちんと公共に報告が求められ公開が義務付けられているのです。オーナー経営者が公私混同しても税金さえ払っていれば通用してしまう株式会社などよりも、規模は小さくても社会的信用が高いのは当然でしょう。、きちんと大きくして「認定」をとれば寄附金控除で寄付した人にもメリットがあって寄付が受けやすくなるという大きな利点があるのですね。

でも逆を言えば、そうやってきちんと大きく育てて認定とって寄付をえて(寄付がもらえるのがNPOのメリット、事業計画予算にもどっしり寄付金の欄がデフォルトである)いくには、それなりの組織体制を整えて、かつ寄付を大規模安定的に集められる仕組みと営業力が必要になってきます。
何かのモノやサービスの対価ではなく、趣旨に賛同していただける方を見つけ出し、アプローチし、活動を知ってもらい、理解してもらい、対価なしでお金を出してもらうって、ある意味営利企業より厳しい世界ですね。

幸い私が関わらせてもらっているところは、事業自体収入が見込めたり、自治体や他の福祉団体ときちんと連携取れて社会貢献を本気で取り組んでいる素晴らしい方々ばかりなのでとても誇らしいのですが、かっこいいとか信用があるとかいう安易な気持ちでNPOを作ろうとしても必ずや中途半端になって崩壊しますよ。
それならば一般社団法人や合同会社のほうがよっぽど簡単です。

Categories: